※本記事は「【完全ガイド】パイソンレザーの社会的価値・倫理・環境(第91回~100回)」で紹介されている“パイソン革とCITES|タイ政府の対応策”を詳しく掘り下げた記事です。
──パイソン財布を支える“国際協定と現地管理”の仕組み
はじめに──美しさの裏にある「国際ルール」
私たちが手に取る美しいパイソン財布。
その背後には、自然保護と国際協調の理念から生まれた**「ワシントン条約(CITES)」**という取り決めが存在しています。
なぜタイで採れるパイソンの革が、国境を越えて正規に流通できるのか?
その背景には、国際協定とタイ政府の徹底した対応策があるのです。
本記事では、CITESの概要と、パイソン革を合法的に世界に届けるためのタイ政府の制度について、わかりやすく解説します。

ワシントン条約(CITES)とは何か?
国際的な絶滅危惧種保護の枠組み
CITES(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)は、絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引を規制する条約で、1975年に発効されました¹。
2024年現在、183ヵ国以上が加盟しており、対象となる動植物の国際売買は、以下のように**「附属書」と呼ばれる分類リスト**に基づいて管理されています。
- 附属書I:商業取引原則禁止(絶滅危惧種)
- 附属書II:輸出入に許可が必要(絶滅の恐れあり)
- 附属書III:特定国の要請により規制される種
パイソン類(例:ビルマニシキヘビ=Python bivittatus)は附属書IIに分類されており、取引の際には各国政府による輸出許可書の発行が必要です。
パイソン革と国際取引規制の関係については、【第92回】CITESとパイソン革の輸出規制でも詳しく解説しています。
タイにおけるCITES対応の実態
法制度の整備
タイは1992年にCITESに正式加盟。以降、国内での実効性確保のために次のような法整備を進めてきました²:
- **野生動物保護法(Wild Animal Reservation and Protection Act)**の改正
- CITESに基づく**国別管理機関(MA)と科学機関(SA)**の設置
- 違法取引への刑事罰強化(最高5年の懲役など)
これにより、パイソンの捕獲・飼育・加工・輸出入すべての段階で法的枠組みが明確化され、合法流通ルートが整備されました。
養殖業者への認証制度
さらにタイ政府は、野生個体の捕獲依存を減らすため、養殖によるパイソン供給体制の構築を推進。
- 養殖登録番号の発行
- 飼育環境・飼料・記録管理の審査
- 年次報告書とモニタリング義務化
これにより、合法性とトレーサビリティ(追跡可能性)を両立したパイソンレザーの供給が可能になっています。
タイ産パイソンとヨーロッパ産の倫理的な違いについては、【第95回】タイ産パイソンとヨーロッパ産の倫理的違いで比較しています。
輸出プロセスとCITES書類の流れ
タイからパイソンレザーを輸出するには、以下のステップが必要です:
- 養殖業者が登録済みであることを確認
- 革の加工業者が許可証を取得
- 輸出業者が**CITES Export Permit(輸出許可証)**を申請
- 許可証には個体識別番号・種名・原産地などが明記される
- 輸出国・輸入国の通関時に提示され、検査を経て通過
この一連のプロセスにより、違法捕獲や密輸のリスクを大幅に減少させています。
パイソン財布に込められた「信頼の仕組み」
購入者が確認できるポイント
パイソン財布を選ぶ際、以下の点を確認することで、その製品がCITES遵守の合法製品であるかを見極められます。
- 製品タグまたは付属証明書に「CITES登録番号」の記載があるか
- 「原産国」や「養殖個体」などの表記があるか
- ブランド側がトレーサビリティやサステナビリティを明言しているか
とくにタイ産のパイソン財布は、政府主導の厳格なCITES対応策により、世界的に評価されている正規ルートの製品です。
日本国内のCITES対応と輸入業者の役割
日本もCITES締約国であり、環境省・経済産業省が輸入許可と検査を担当しています。
国内に正規流通されているパイソン製品は、すべてCITES証明がなされている必要があり、並行輸入品や非正規ブランド品には注意が必要です。
タイ政府の今後の強化策
近年、CITES事務局は世界的な「違法野生動物取引の増加」に対する懸念を表明しており、タイも次のような施策を進行中です³:
- 電子CITES(eCITES)制度の導入:書類の電子化とリアルタイム追跡
- 農村部支援型エシカル養殖制度の拡大
- 透明性向上のための公開データベース整備
これらにより、より厳密な流通管理と国際信頼性の向上が期待されています。
パイソン素材を環境と倫理の観点で選ぶ方法は、【第93回】パイソン素材を環境と倫理で選ぶ視点を参考にしてください。
まとめ──パイソン財布を「合法的に、誇りを持って」選ぶために
美しいだけではない──
パイソン財布は、国際条約とタイ政府の努力のもとに成り立つ、信頼と責任の象徴でもあります。
- CITESによる国際的な保護制度
- タイ政府による登録管理と法制度
- 消費者による正しい製品選び
これら三者の連携が、「倫理ある贅沢品」としてのパイソン財布を支えているのです。
次に財布を選ぶときは、ぜひその革がどこから来て、どのように守られてきたかに、少し目を向けてみてはいかがでしょうか。
パイソンレザーの社会的価値・倫理・環境について、もっと広く知りたい方へ──
本記事は「【完全ガイド】パイソンレザーの社会的価値・倫理・環境(第91回~100回)」にて取り上げている“パイソン革とCITES|タイ政府の対応策”の記事です。
📑 参考文献
¹ CITES公式サイト「条約概要と附属書」2024年版
² タイ天然資源環境省「野生動物取引管理マニュアル」2023年
³ TRAFFIC「タイにおけるeCITES導入とその影響」2022年
