──「見せる財布」から「誇る財布」へ。クロコダイルが格式を帯びた理由とは──
※本記事は「タイのクロコダイル産業史|革製品製作の始まりから現在までの歩み」で紹介されている“格式品としての歴史的ポジション”を詳しく掘り下げたものです。
そのクロコダイル財布は、ただの小物ではない。社会的地位を象徴する、“格式”そのものだった。
クロコダイル財布は、誰のためのものだったのか?
今やラグジュアリーなレザーアイテムの代名詞として知られるクロコダイル財布。
あなたがもし、それを「単なる高級ファッションアイテム」と思っているなら──
それは、かつてのクロコ財布が持っていた“もうひとつの顔”を見落としているかもしれません。
特に日本と東南アジアの経済成長期において、クロコダイル財布は、銀行役員・財界人・官僚・政治家など、社会的地位の高い人々に「格式ある持ち物」として用いられてきた歴史があります。
ブランドロゴではなく、素材そのものが発する威厳や信頼感──それこそが、彼らがクロコダイルを選んだ理由でした。
この記事では、クロコダイル財布がなぜ「格式品」とされてきたのか、その背景を紐解き、今あらためて“選ばれる理由”を探ります。

金融の世界と“財布”の静かな戦略性
銀行の役員室で交わされる名刺交換、接待の食事の席、金融庁との静かな会話──
こうした場面でさりげなく取り出される財布には、言葉を超えた「信頼」や「格式」を象徴する力が求められました。
ブランドロゴが前面に出すぎる財布は、自己主張が強すぎる。
逆に量販品では、職責にふさわしさが欠けてしまう。
そこで選ばれたのが、“一目でわかる素材感と上質さを持ちながら、語りすぎない”クロコダイルレザーでした。
その独特の鱗模様──とくにクロコダイル腹部のセンターカット部分の揃った斑(ふ)が並ぶ財布を見れば、見る人が見ればすぐに「本物」とわかる。
それでいて、ブランドロゴに頼らず、持ち主の品格をさりげなく表現できる。
金融業界におけるクロコダイル財布は、「静かなる信頼の象徴」として広まっていきました。
財界人と“贈る財布”の文化
贈る行為が“価値観”を語る時代において、第20回|贈答品としての歴史では、クロコダイル財布が“格式ある贈り物”として選ばれてきた背景を掘り下げています。
1980年代から2000年代初頭まで、日本をはじめとしたアジアの財界には、**「財布は地位の証」「財布は人間関係を結ぶ贈答品」**という文化が色濃くありました。
特に日本では、「財布=金を招く縁起物」としても扱われており、
新年の贈り物や、昇進祝い、定年退職の記念などに高級財布が選ばれる傾向が強かったようです。
その中でもクロコダイル財布は特別な存在でした。
- 高価格である(=贈る側の誠意と格が伝わる)
- 長く使える(=縁が長く続く)
- 希少性がある(=相手が特別であることを示す)
こうした意味を持つクロコダイル財布は、特に財界において「贈るにふさわしい一品」として重用されてきました。
中には、業界団体が役員就任の記念に特注のクロコダイル財布を贈るケースや、
政治家の秘書が予算に合わせて“ワシントン条約準拠の証明付き”で発注する例も存在しました。
官僚・政治家がクロコダイルを選んだ“理由”
“語らずに伝わる威厳”を求める層にとって、第22回|OTOP制度との関係が示すように、クロコダイル財布は国家的な価値として育てられてきました。
日本の政界・官僚文化においては、派手すぎず、かといって安価すぎない“品格ある装い”が求められる場面が多いようで、ステータスを誇示せず、しかし素材の良さで“語れる一品”──クロコダイル財布は、そんな立場の人々に選ばれてきたのかもしれません。
「あの人が持っているなら私も」ではなく、
**「信頼される人が選んでいる素材を、自分も静かに選ぶ」**という暗黙の連帯なのかも知れません。
シャムワニという“静かな格式”──クロコダイル財布が選ばれてきた理由
ひと目見てわかる派手さではない。
けれど、手に取ったとき、ふと「良い物だ」と感じさせる質感がある。
そんな財布として、クロコダイル──特に**シャムワニ(Siamese Crocodile)**は、長く“静かな格式”を象徴する存在でした。
■ タイ原産──世界に知られるクロコダイル革
シャムワニは、東南アジアに生息するクロコダイルの一種で、タイを原産とする希少種です。
このクロコダイルの革は、腹部(ベリー部)にかけての斑(ふ)の並びが整っており、手触りもやわらかく、レザーとしての美しさと扱いやすさを兼ね備えています。
実際、欧州の一部高級ブランドでも、ナイルワニやアリゲーターと並んでシャムワニの革を採用するケースがあるなど、一定の評価を得ています。
■ タイで根付いた“手仕事”と“鞣し文化”
タイには、王室プロジェクトの支援を受けた認定クロコダイル養殖場や、職人による手仕事が代々受け継がれてきた工房が多く存在します。
中でも高級工房では、クロコダイル腹部のセンターから美しく革を取る「センター取り」や、手縫いによる丁寧な仕立てなど、実直で手間を惜しまないものづくりが今も大切にされています。
こうした一貫体制の中で生まれる財布は、あえてブランド名を前面に出さずとも、革そのものの上質さで語ることができる──そんな魅力を持っています。
■ 目立たず、しかし妥協なき品格を
日本では、官僚や政治家、経営者といった“背中で語る”立場の人たちにとって、過度に目立つアイテムは慎まれる一方、あまりに安価な物も品位を損なうと見なされてきました。
その中間にある、「控えめだが確かな質感」のアイテムとして、マット加工のクロコダイル財布が選ばれることも少なくありませんでした。
ある元官僚は、「クロコダイル財布は、黙っていても“きちんとした物を使っている”と伝えてくれる」と語っています。
こうした文化の中で、“ブランドより素材”、“デザインより仕立て”という選び方が、特定の層に根付いていました。
■ 贈り物としてのクロコダイル──“語れる一品”
一部の日本の百貨店や高級セレクトショップでは、タイ製のクロコダイル財布が贈答品として扱われていた事例もあります。
ラグジュアリーブランドのロゴが主張する時代にあって、あえて無銘、でも明らかに違う質感──そうした「語れる一品」として選ばれたのが、シャムワニのクロコダイル財布でした。
センター取り、手縫い、マット加工。
そして、タイという伝統と進化が交わる地で育まれたクラフトマンシップ。
そのすべてが詰まった財布は、今なお“本質を選ぶ人”たちの傍にあります。
贈られる“覚悟”、持つ“責任”──クロコダイル財布に込められた本当の意味
クロコダイル財布──それは単なる高級革製品ではありません。
とりわけ、贈答品として誰かの手に渡るとき、そこには静かで、けれど確かな“意味”が込められていることが少なくありません。
たとえば、ある政治家が若手秘書に手渡すとき。
あるいは、大企業の役員が後進に託すとき。
その財布はこう語っているのです。
「君は、これを持つにふさわしい人間だ」
「この財布に恥じぬ行動をしてほしい」
「信頼と覚悟を、この一品に託す」
表立って言葉にすることはなくとも、贈る側の期待や信頼が“革”に宿る。
だからこそ、贈られる側にも“受け取る覚悟”が必要だったのです。
この意味で、クロコダイル財布はただの道具ではなく、人生の節目を象徴する“信頼の証”であり、儀礼具に近い役割を果たしていたと言っても過言ではありません。
■ 変わる時代、変わらない本質
時代は移り変わり、形式ばった贈答文化や役職意識は、少しずつ薄れつつあります。
しかし、今もなお多くの人が心のどこかでこう思っています。
「財布は、その人の価値観を映すものだ」
特に、ブランドロゴや派手な装飾が溢れる現代において、
“主張しないが、見る人が見ればわかる”──そんな製品が、改めて注目を集めています。
中でも、タイの老舗工房で熟練の職人たちによって手がけられるクロコダイル財布は、
外見ではなく“中身”で語るという意味で、かつての格式を今に受け継ぐ存在です。
本物の革を選び、センター取りにこだわり、丁寧に縫い上げる。
ロゴではなく、質と背景で語る──その姿勢が、静かに人々の心を打ちます。
■ 語らずとも伝わる、“覚悟の贈り物”として
もしかすると、クロコダイル財布は贈る側の“覚悟”そのものなのかもしれません。
そして、贈られた人の“背筋を正す力”を持っている。
それが高価であるかどうかではなく、その背景にあるストーリーや信頼が、持つ人の人生に寄り添っていく。
タイの革工房で生まれた、ひとつのクロコダイル財布。
それは今も、「語らずとも伝わる」贈り物として、受け継がれ続けています。
「背景と誇り」が備わった、本物の一品です。
■ 格式を持つとは、何を意味するのか?
格式ある品とは、見た目の派手さではなく、第10回|手縫い文化との融合にあるように、見えない“技”と“精神”に宿るのかもしれません。
格式とは、他人に見せるための飾りではありません。
むしろ、自分自身がどうありたいかを静かに伝える“覚悟”のかたちです。
クロコダイル財布は、そんな意思を表す道具として、
長らく銀行・財界・政府の人々に選ばれてきました。
そして今、私たちはタイの老舗工房と協力し、
そうした**“語れる格式”を、現代に再び提供する製品をお届けしています。**
選ぶのは、他人に自慢したいからではない。
「これを持つに値する自分でありたい」──その覚悟を持ったあなただからこそ,
手にして頂きたい逸品です。
タイのクロコダイル産業の全体像を、もっと広く知りたい方へ──
本記事は「タイのクロコダイル産業史|革製品製作の始まりから現在までの歩み」にて取り上げている“格式品としての歴史的ポジション”に関連した内容です。
