クロコダイル製品、パイソン製品は現地の工場に直接製作依頼し、熟練の職人が丁寧に手作業で作成したハンドメイド。大量生産では決して真似できない、細部にわたる職人のこだわり。本物を求めるあなたにも手に取っていただきたいと願っています。
カービングの立体模様が“色の陰影”をさらに強調し、まさに“育つ芸術作品”へと進化します。

第79回:レザーカービングのダブルカット・シャドウラインの効果的な使い方

はじめに

同じ図案・同じ打刻でも、ダブルカット(二本の近接カット)とシャドウライン(主線の“影側”に入れる極浅の補助線)を加えるだけで、輪郭の厚み・奥行き・キレが数段上がります。

ベベリングだけでは作りにくい“細い陰”や“浮き上がり”を、線の設計で与える技法です。

本稿では、原理→工具設定→基本手順→用途別の5技→アンティークの相性→NG対処→練習ドリル→QCまで、現場で再現できる手順に落とし込みます。


1. 用語と原理(何がどう効くのか)

  • ダブルカット:主線の外側または内側に、0.2〜0.6mm離してもう一本のカットを入れ、溝=細い“谷”を作る。するとアンティークが谷に残り、線自体が立体物に見えます。
  • シャドウライン:光源(左上固定を推奨)に対し“影側”へ、極浅の補助線を1本だけ置く。主線の読みは保ちつつ、最小限の陰で厚みを出す。
  • 外深・内浅との関係:花弁やレタリングの内側は浅く外側を沈める基本設計に、二本目の細い“谷”を併用すると輪郭の層が増えます。

2. 工具と前提(ここで9割決まり!)

  • スーベルナイフ:刃角40〜45°。よく研ぎ、鏡面ストロップで微バリを消す。鈍い刃は線を太らせ、二本目の“谷”が濁る。
  • ケーシングカット=潤い、ベベリング=やや戻し。カット時は半艶で水膜なしが目安。
  • 幅の基準:ダブルカットの線間0.2〜0.6mm。細密=0.2〜0.3、一般=0.4、強調=0.5〜0.6。
  • 深さの序列:主線(深)>ダブル(中)>シャドウ(極浅)。浅い順で直せる設計にする。
  • 作業テンポ:BPM80〜100。焦ると間隔がブレる。

3. 基本手順(標準レシピ)

① 主線カット → ② ダブルカット → ③ 外深・内浅ベベリング → ④ シャドウライン → ⑤ 境界処理 → ⑥ レジスト → ⑦ アンティーク(線方向拭き) → ⑧ 半艶トップ

ポイント

  • ダブルは主線の外側に置くのが無難(内側はカウンターを狭めやすい)。
  • コンパス思考:主線と常に等距離を保つ。手首の回転で半径を固定。
  • シャドウラインは“置く”だけ。切り込まない(革繊維を裂かず、表皮に溝の気配を描く意識)。
  • ベベリングは主線側を優先し、ダブル側は“触るだけ”。やり過ぎは“溝の崩れ”に直結。

4. 用途別“5つの決定打”

4-1 フローラル:花弁の厚みを倍増

  • 設計:花弁の外周に沿ってダブルカット(0.3〜0.4mm)。根元はやや広く、先端は狭めて先細りを強調。
  • 運用:外周側を外深ベベリング、内側は浅く。シャドウは根元〜中間だけに短く置き、先端は入れない。
  • 効果:アンティークでダブルの谷が締まり、花弁がぷっくり見える。

4-2 リーフ:中央脈の“グロス感”

  • 設計:主脈の片側(影側)にダブル0.3mm、もう片側に極浅シャドウ
  • 運用:主脈に沿ってハーフムーンの薄面を足すと、金属的な艶が出る。
  • 効果:中心が高く、左右が落ちる“屋根”の断面が明快になる。

4-3 レタリング:読みやすさ最優先

  • 設計:主線を中深、右下辺に短いシャドウ、外周の開けた側に0.2〜0.3mmのダブル
  • 運用:a/e/oのカウンター(内側)はダブル禁止外深・内浅で守り、アンティークは載せず拭う
  • 効果:縁取り効果で文字が一段前に出る。影は“位置で効かせる”(多用しない)。

4-4 バスケット×唐草の境界:崖を消す橋渡し

  • 設計:ボーダーで硬化→唐草側の主線外側にダブル→境界へハーフムーン薄面
  • 運用:アンティークは織方向へ拭き、ダブルの谷に色を残す。
  • 効果:格子の硬さ→曲線の柔らかさへ、空気の層が生まれる。

4-5 フィギュア(羽・毛):微細な段差で情報量を増やす

  • 設計:羽根のバー(枝)に沿って0.2〜0.3mmでダブル、先端側にシャドウを短く。
  • 運用:強弱=根元濃/先端淡、影は3箇所以内
  • 効果:毛流れや羽の層が写真で読めるようになる。

5. 幅・深さ・間隔のガイド(目安表)

  • 線間:0.2(細密)/0.3(精密)/0.4(標準)/0.5〜0.6(強調)
  • 深さ:主線100%/ダブル60〜80%/シャドウ20〜30%(“切らずに撫でる”意識)
  • 置く位置影側にダブル、同側または逆側にシャドウ(図案と光源で選択)。
  • 禁則狭いカウンター内最小線間<1.0mmの場所には入れない。

6. 仕上げと相性(アンティークで差が付く)

  • レジスト:焦点(花芯・瞳・ロゴ交点)に選択レジストを追加し、明度差を確保。
  • 拭き線方向一方通行。円拭きはダブルの谷から色を引き上げて崩す。
  • トップ半艶推奨。稜線のハイライトが立ち、ダブルの“細い黒”が写真で映る。
  • 撮影斜光45°、中明度背景。谷と稜線のコントラストを拾う。

7. よくあるNG→即時リカバリー

  • ダブルが太すぎる/溝が崩れた
    • 応急:乾かしてから外側だけ微ベベリングで“細見え”補正。
    • 恒久:線間0.3〜0.4を上限に。テンポ(BPM)固定で手ブレを抑制。
  • 影を入れ過ぎて主線が負ける
    • 応急:ドライブラシで稜線を起こし、影は3箇所以内に削る。
    • 恒久:光源矢印を図案に明記、“位置で効かせ量で語らない”。
  • レタリングのカウンターが詰まる
    • 応急:モデラーで起こし、アンティークは載せず拭う
    • 恒久:内側はダブル禁止外深・内浅を徹底。
  • アンティークで谷が濁る
    • 応急:線方向拭きに切替、馬毛ブラシで均す。
    • 恒久:レジスト薄層×2、希釈率と拭き秒数を端革で決定

8. 15分×5日の練習ドリル

  1. コンパスドリル:主線に0.3mm等間隔でダブルを一周。写真ID #YYYY-MM-DD-01
  2. 深さコントロール:主線100/ダブル70/シャドウ30を一直線に並べ、触感で差を覚える。
  3. 花弁ドリル:外周ダブル→外深→根元だけシャドウ。先端は入れない癖付け。
  4. 字の読みテスト:“CRAFT”で右下だけ短いシャドウ+外ダブル0.2。
  5. 境界ミックス:バスケットの縁にダブル→唐草側へ薄面ハーフムーン。撮影比較。

9. ワークフロー(迷わない順序の型)

  1. 図案に光源矢印ダブルの地図(太線外に点線)を描く。
  2. ケーシング:カット=潤い/打刻=やや戻し
  3. 主線→ダブル→外深・内浅→シャドウの順。
  4. 境界処理(曖昧化:ビーディング+薄BG/硬化:ボーダー)。
  5. レジスト→アンティーク(線方向拭き)→半艶トップ
  6. 撮影:斜光45°、中明度背景。稜線が読めなければ影を削る

10. ケーススタディ(3例)

A:ロングウォレットの主役花

  • 設計:花弁外周ダブル0.4、根元のみシャドウ。
  • 実装:外深・内浅→ハーフムーンで面を繋ぐ→アンティーク薄層×2。
  • 効果:花弁が二層に見え、サムネでも焦点が立つ。

B:ベルト38mm(バスケット+コーナー唐草)

  • 設計:格子側にボーダー、唐草主線の外へダブル0.3。
  • 実装:織方向に拭き、ダブルの谷を黒で締める。
  • 効果:硬→柔の移行が滑らか、斜行の錯視も抑制。

C:円形メダリオン+レタリング

  • 設計:外周の開け側にダブル0.2、文字は右下へ短いシャドウ。
  • 実装:カウンターは内浅で死守、アンティークは載せず拭う
  • 効果:文字の読みが改善、中央がふわりと浮く。

11. QCチェックリスト(出荷前に必ず見る)

  • ダブルの線間0.2〜0.6mmが一貫しているか。
  • 主線>ダブル>シャドウの深さ序列が守られているか。
  • カウンター内の侵入ゼロか(a/e/oの内側)。
  • 境界は曖昧化or硬化で統一、崖が消えているか。
  • アンティークは線方向拭きで、谷に色が残っているか。
  • 仕上げは半艶、写真**斜光45°**で稜線が読めるか。
  • 余白帯(1.5〜4mm)は清潔か。
  • 視線の入口→停留→回遊が一本で説明できるか。

12. FAQ

Q. ダブルとシャドウ、どちらを先?
A. 基本はダブル→外深・内浅→シャドウ。シャドウは“最小手数”の最終調整。

Q. ダブルは必ず外側?
A. 原則は外側。**内側は禁則領域(狭いカウンター、急角)**が多く、詰まりの原因。図案で例外を明記した場合だけ。

Q. 写真で差が見えません
A. 半艶トップ+斜光45°へ。鏡面は映り込みで“細い黒”が消え、真上光は谷が読めません。


まとめ

ダブルカットとシャドウラインは、ベベリングの前に“線で陰影を設計する”ための道具です。

線方向拭き+半艶×斜光45°で“見せ切る”こと。
このワークフローを固定化すれば、同じ図案でも輪郭が厚みを持ち、写真で勝てる“細い黒”が安定して再現できます。

線間0.2〜0.6mm・深さの序列・影は短浅3箇所以内をルール化し、

外深・内浅と組み合わせて輪郭の層を増やし、

外深・内浅と組み合わせて輪郭の層を増やし、

線方向拭き+半艶×斜光45°で“見せ切る”。
このワークフローを固定化すれば、同じ図案でも輪郭が厚みを持ち、写真で勝てる“細い黒”が安定して再現できます。


注釈

[注1] 線は“構造”で、色は“翻訳”。ダブルの谷に色が残る設計を前提に図案を作ると、仕上げで迷わない。
[注2] 光源左上固定が基本。影は位置で効かせ、量で語らない。
[注3] カット=潤い/打刻=やや戻しの含水差を守ると、細い谷が濁りにくい。

参考文献

  • Al Stohlman, The Art of Leather Carving. Tandy Leather, 1985.
  • Al Stohlman, Figure Carving Finesse. Tandy Leather, 1979.
  • Tony Laier, Leathercraft Tools: How to Use Them, How to Sharpen Them. Tandy Leather, 2003.
  • Bruce Grant, Leatherwork Manual. Cornell Maritime Press, 1972.
  • 西田耕三『レザーカービングの技法』誠文堂新光社, 2008.

カービングの立体模様が“色の陰影”をさらに強調し、まさに“育つ芸術作品”へと進化します。
最新情報をチェックしよう!
>完全限定生産 熟練の職人が丁寧に手作業で作成したハンドメイド

完全限定生産 熟練の職人が丁寧に手作業で作成したハンドメイド

大量生産では決して真似できない、細部にわたる職人のこだわり。そのこだわりが、当店のクロコダイル、パイソン作品には詰め込まれています。本物を求めるあなたにもぜひ手に取っていただきたいと願っています。華やかなブランドロゴや大量生産品では決して得られない、唯一無二の価値を感じていただけるはずです。

人生を共に歩む「相棒」として、あなたの毎日を豊かに彩り、特別な存在となるでしょう。

CTR IMG