クロコダイル製品、パイソン製品は現地の工場に直接製作依頼し、熟練の職人が丁寧に手作業で作成したハンドメイド。大量生産では決して真似できない、細部にわたる職人のこだわり。本物を求めるあなたにも手に取っていただきたいと願っています。

【第99回】“残酷な高級品”から“信頼されるパイソン”へ

※本記事は「【完全ガイド】パイソンレザーの社会的価値・倫理・環境(第91回~100回)」で紹介されている“残酷な高級品から信頼されるパイソンへ”を詳しく掘り下げた記事です。

パイソンレザーのイメージ転換と持続可能性の歩み

はじめに──「残酷なラグジュアリー」からの脱却

かつて、パイソンレザーは「美しさの代償」と称され、環境保護団体や動物愛護の視点から“残酷な高級品”として批判の的にされてきました。特に20世紀後半のファッション業界では、華やかな蛇革のアイテムが一部のセレブリティや高級志向層の象徴として重用され、その背景にある野生動物の乱獲や不透明なサプライチェーンが問題視されました。

しかし、時代は変わりつつあります。倫理的な調達、持続可能な生産体制、トレーサビリティ、アニマルウェルフェア──そうした概念を受け入れ、実行するブランドが増え、パイソンレザーもまた、“信頼される素材”として再定義され始めています。この記事では、その転換の歩みを、現実的な取り組みとともに見ていきます。

パイソンレザーの倫理的課題やサステナブル素材としての可能性については、 【第91回】パイソン革は残酷か?サステナブルレザーとしての実態でも詳しく解説しています。


1. パイソンレザーが抱えていた“倫理的な壁”

パイソンレザーは、その独特な模様と高級感から、バッグ・財布・靴などに幅広く使われてきましたが、その供給の多くは東南アジアにおける野生種の捕獲に依存していた時代がありました。とりわけ1960〜1980年代には、乱獲による個体数減少、劣悪な飼育環境、規制の甘さなどが世界的に問題視されました¹。

また、革の加工過程における動物の扱いや生産者の労働環境、排水や廃棄物処理なども社会的・環境的懸念の対象でした。こうした背景から、消費者の間にも「蛇革=残酷」というイメージが根強く残ることとなりました。


2. 変化のきっかけ──CITESとグローバル倫理の潮流

この問題に対応する形で、1975年に発効されたワシントン条約(CITES)は、パイソンを含む絶滅の恐れのある種の国際取引を規制し、正規のルート以外からの調達を制限する仕組みを構築しました²。これにより、輸出入には登録・監査が必要となり、産地・数量の把握が進むようになりました。

さらに、欧米のラグジュアリーブランドが「サステナビリティ」と「倫理的供給」をブランド価値に組み込むようになり、供給元に対しても厳格なガイドラインを要求するようになりました。生産国であるタイ、インドネシア、マレーシアなども、この動きを受けてパイソン飼育の管理制度や法整備を進めるようになります。

パイソン革の国際的な取引管理の背景には、CITESによる規制があります。制度の詳細は 【第92回】CITESとパイソン革の輸出規制をご覧ください。


3. 持続可能なパイソンレザーの実現に向けた取り組み

タイでは、政府主導のもとパイソンの養殖場に対する登録制度と監査体制が整備されました。CITES認可の施設では、パイソンの飼育から革の加工、流通に至るまで、すべての工程を記録し、輸出の際にはトレーサビリティ情報を添付する仕組みが導入されています³。

これにより、消費者は「どこで育てられ、どのように処理されたパイソン革か」という透明性を得ることが可能となりました。一部の生産者は、放牧に近い自然環境での飼育や、ストレスを与えない捕獲・処理方法を採用し、アニマルウェルフェアの基準に則った運営を行っています。

また、環境負荷の少ない植物性タンニンによるなめしや、廃水の再利用といった「グリーンな加工技術」も普及しつつあり、エシカルなパイソンレザーとしての信頼性を高めています。


4. 消費者の意識変化と市場での再評価

現代の高所得層、とくに40代以降の消費者層においては、見た目やステータス性だけでなく、素材の背景にある「ストーリー」や「信頼性」に対する評価が高まっています。倫理的に問題のある素材を避け、サステナブルな選択をすることが、ひとつの知性あるスタイルとして認知される時代です。

パイソンレザー製品も、こうした潮流のなかで“負の遺産”から“誇れる選択”へと変わりつつあります。例えば「この財布はCITES認定の工房で作られ、地元の職人が伝統技術で仕上げたものです」といった背景を持つ製品は、単なる贅沢品ではなく、「責任ある消費」の象徴として再評価されています。

購入者がパイソン財布を選ぶ際の倫理的な判断軸については、 【第93回】パイソン素材を環境と倫理で選ぶ視点が参考になります。


5. ラグジュアリーの再定義──“美しさ”と“倫理”の共存

本革に対する世間の目が厳しくなる一方で、「だからこそ、しっかりと管理された革製品を選ぶ」という意識が、成熟した消費者の中では定着しつつあります。パイソンレザーの美しさは、決して表面的な装飾性にとどまらず、「信頼できるプロセスを経ているか」という倫理的価値と強く結びつくようになりました。

また、こうした動きはサプライチェーン全体の意識改革にもつながっています。生産者は倫理的調達を武器にグローバル市場での競争力を高め、消費者は“良心ある選択”としての満足感を得る──これは単なるイメージ戦略ではなく、持続可能な社会への一歩として、実に意味深い流れだといえるのではないでしょうか。


まとめ|パイソンレザーに未来はあるのか

“残酷な高級品”という過去のイメージは、確かにパイソンレザーの一部を構成していました。しかし、現代においては、多くのプレイヤーがその反省をバネに、新たな価値を築いています。倫理・環境・職人技という三本柱を軸に、パイソンレザーは“信頼される素材”として再出発を果たしつつあるのです。

財布やバッグを選ぶとき、素材の背景にある「物語」に目を向けること──それは、未来のラグジュアリーを形作る大切な視点となるのではないでしょうか。

パイソンレザーの社会的価値・倫理・環境について、もっと広く知りたい方へ──
本記事は「【完全ガイド】パイソンレザーの社会的価値・倫理・環境(第91回~100回)」にて取り上げている“残酷な高級品から信頼されるパイソンへ”の記事です。


📚参考文献

¹ WWF「Illegal Wildlife Trade and the Fashion Industry」(2021)
² CITES Official Site(https://cites.org)
³ Thailand Department of National Parks, Wildlife and Plant Conservation「Python Trade Management Guidelines」(2023)

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