─ 国家が守った“手仕事”が、今のクロコダイル製品を支えている ─
※本記事は「タイのクロコダイル産業史|革製品製作の始まりから現在までの歩み」で紹介されている“政府による革産業支援政策の経緯”を詳しく掘り下げたものです。
手を動かすことが、国の未来をつくる──タイが選んだ“クロコダイル革の道”
■ タイのクロコダイル製品が「高品質」と呼ばれる理由の裏には、政府の影がある
クロコダイル製品というと、多くの人が“職人技”や“素材の良さ”をイメージします。
確かにそれは間違いありません。しかし、それだけでは説明できない“深さ”があります。
たとえば、なぜタイ製クロコダイル財布は、価格が抑えられながらも品質が高いのか?
なぜ地方の工房でも、安定した仕上がりの製品を作れる環境が維持されているのか?
その答えのひとつが──
**「タイ政府によるレザー工芸支援政策」**にあります。
この記事では、タイ政府がどのようにして“革産業”を育ててきたのか、
その歴史と、現在のクロコダイル製品にどのような影響を与えているのかを、事実に基づきご紹介します。
■ 1970年代:ワニ養殖と皮革加工の“分業構造”が始まる
タイが本格的にクロコダイル産業に乗り出したのは1970年代。
この頃、国際的なワニ革需要が拡大する一方で、野生捕獲への批判が高まり、
計画的な“養殖事業”への転換が求められる時代となっていました。
そこで、タイ政府は次のようなステップを踏みます:
- シャムワニの保護と繁殖に関する国家プロジェクト開始(1974年)
- 国内の養殖場に対してライセンス発行制度を設置
- 皮革加工・輸出の振興と、関連法整備
これらの政策によって、養殖→皮処理→加工→輸出というサプライチェーンが国内に形成されていきます。
とくに、加工分野においては**“手仕事による付加価値”**に注目が集まりました。
■ 1980年代:工芸教育の整備と“技術移転”の促進
こうした技術移転の流れは、実際に第12回|海外ブランドのOEM採用史でも確認されるように、世界基準に近づく転換点となりました。
加工技術の底上げには、“人”の育成が不可欠です。
そこでタイ政府は1980年代から、次のような工芸支援政策を打ち出しました:
◉ 地方職業訓練校(Vocational Training Schools)の拡充
- 革加工・縫製・彫金・染色といった工芸技術を地域で学べる場を整備
- 農村部の若者に“都市へ出なくても身に付けられるスキル”として注目を集める
◉ 海外ブランドとの技術提携(OEMと連動)
- イタリアや日本のタンナー・デザイナーを招き、加工ノウハウを国内に導入
- 欧州品質に対応する技術基準の確立へ
◉ 女性の自立支援とレザークラフト訓練
- 地域の主婦層にレザークラフトを指導し、副収入源として工芸を根付かせる
- OTOP(One Tambon One Product)制度の下地がこの時期に築かれる
つまり、この時代にはすでに「レザー工芸=国の産業資源」としての認識がありました。
■ 1990年代:OTOP制度の導入と“地場工房”の育成支援
OTOP制度とクロコ工房の結びつきについては、第22回|OTOPとクロコ財布の関係でより詳しく紹介されています。
2000年に正式スタートした**OTOP制度(One Tambon One Product)**ですが、
その原型は1990年代後半からタイ国内で徐々に形成されていました。
この制度の最大の目的は──
**“地域ごとの特産工芸品を国が後押しし、経済の多極化と雇用を創出する”**こと。
クロコダイル製品は、特に以下の地域で育成されました:
- ナコーンパトム県・ノンタブリー県:革の鞣しと加工技術
- バンコク郊外:OEM生産工房の集中地区
- 北部チェンマイ周辺:ハンドクラフトや彫刻的要素との融合製品
この時期から、地方工房は**「ブランド」ではなく「背景」を売る」という意識を持ち始め、
結果として、日本や欧米のバイヤーからも“サステナブルなものづくり”**として注目されるようになります。
■ なぜタイはレザー工芸を“国家戦略”としたのか?
ここまでの支援策を見ても、「なぜそこまで?」と疑問を持たれるかもしれません。
その背景には、次のような“国家的意図”があります:
◉ 地域格差の是正と雇用創出
- バンコク一極集中を緩和するため、地方経済を支える産業として工芸が選ばれた
- 小規模生産でも回せる“レザー製品”は農村部に最適だった
◉ 観光政策との連携(観光土産としての革製品)
- 観光客に対する“高級タイ製”の訴求
- 革財布やバッグが「タイ旅行の記念品」として定着
◉ 国際競争力の確保
- 「安いだけ」では中国などに勝てない
- 手仕事と品質で勝負できる“高付加価値品”としてクロコ製品に注力
つまり、クロコダイル製品は──
単なる工芸品ではなく、“国策に育てられた産業”だったのです。
■ 現在──“老舗工房”が育まれた理由はここにある
タイ政府の政策が生んだ“育成の成果”は、第6回|老舗工房の背景にも色濃く反映されています。
私たちが提携している工房もまた、これらの支援の流れの中で育ってきたひとつです。
政府からの技術研修や補助金を受け、地域の職人たちが集まり、20年以上継続して品質を磨き続けてきた場所です。
- 職人の約6割は国家資格を取得
- 地域の訓練校と連携して後継育成を行う
- 工房の展示室はOTOPにも登録されており、海外バイヤーの見学も多い
つまり、私たちの扱うクロコ財布には、「国家政策の流れを汲んだ背景」があるのです。
■ 選ばれるべき理由──それは“技術”だけでなく、“仕組み”にある
タイのクロコダイル財布を選ぶ理由は、素材や職人技だけではありません。
本当に信頼できるのは、その“品質を維持できる環境”があること。
- 国家レベルでの技術育成
- 地方分散型の工房ネットワーク
- 観光・輸出との連携による販路支援
これらがあるからこそ、私たちは**「安定して高品質な製品を、お手頃価格で届けられる」**のです。
最後に
タイのクロコダイル財布に魅力を感じる方へ──
それは単に“素材が良い”からでも、職人の腕があるからでもありません。
それを支える“国全体の意志”が、製品に宿っているからです。
もしあなたが、「本物を持ちたい」「語れる背景が欲しい」と思うなら、
そこに国家が注ぎ込んできた支援の歴史を、ぜひ知っておいてほしいのです。
私たちは、その流れを汲む“老舗工房”と連携し、
タイ国内で大切に育まれたクロコダイル財布を、ダイレクトに日本へ届けています。
「ただの製品」ではなく、「背景がある逸品」を──
是非あなたの手にも。
タイのクロコダイル産業の全体像を、もっと広く知りたい方へ──
本記事は「タイのクロコダイル産業史|革製品製作の始まりから現在までの歩み」にて取り上げている“政府による革産業支援政策の経緯”に関連した内容です。