※本記事は「クロコダイル産業と政策の歴史的背景」で紹介されている“クロコダイル財布を輸出する国の責任とは”を詳しく掘り下げた記事です。
世界が注目する“高級革”と向き合う時代へ
私たちが手に取るクロコダイル財布。その光沢ある美しさや、しっとりと手になじむ質感には、一目で“本物”と感じさせる力があります。
しかし、その背後には一つの問いが存在します──
「その財布は、倫理的に正しい選択なのか?」
近年、動物由来製品に対する国際的な視線は一層厳しくなっており、タイのようにクロコダイル産業を国の輸出基幹産業とする国々は、「環境・倫理・経済のバランス」に迫られています。
この記事では、「クロコダイル財布を輸出する国としてのタイ」がどのようにして倫理と環境に向き合ってきたのか、そしてそれが、あなたの財布選びにどのような意味をもたらすのかを紐解いていきます。

世界的な高級財布市場で問われる「倫理性」
ラグジュアリー=責任の証明?
高年収層が持つ財布として選ばれるクロコダイル製品。
確かにその外見やステータス性は他を圧倒しますが、同時に「どのようにして作られたか」が、ブランド評価に大きな影響を及ぼす時代になっています。
例えば、欧州では“倫理的調達”を意味する「Ethical Sourcing」や「サステナブル・ファッション」という概念が急速に広まり、多くのハイブランドがワニ革使用を中止、または透明化を進めています¹。
このような動きに対し、タイはどう応えているのでしょうか?
高級革財布が“責任ある製品”として選ばれる時代背景については、第96回|SDGsとクロコ財布でも、グローバルトレンドと消費者意識の変化を紹介してます。
クロコダイル輸出国としての「説明責任」
CITES体制と国際的な監視網
まず重要なのが、**CITES(ワシントン条約)**に基づく輸出管理です。クロコダイル革は国際的に規制されており、タイから輸出される財布や革製品は、すべてCITESで定められた正規ルートで取引されなければなりません²。

タイ政府は、農業・協同組合省と天然資源環境省が共同でクロコダイル農場と製品加工の審査・登録を行い、輸出前にすべての製品に認証タグを付ける制度を整備しています³。
つまり、日本に届くクロコダイル財布が「合法・安全・倫理的」であるためには、タイ国内での厳格なトレーサビリティと管理体制が必要です。
クロコダイル革の国際流通と規制に関しては、第80回|CITESと政府対応にて、タイ政府がどのように国際基準と連携しているかを記載しています。
動物福祉と共存するクロコダイル養殖の努力
ワニの“扱い”にも世界は注目している
かつては「野生を捕獲して剥ぐ」という誤解や映像が一部で拡散され、クロコ製品全体が不当な批判を受けたこともありました。しかし、現在のタイでは、そのような行為は違法であり、むしろ**動物福祉(Animal Welfare)**に準じた飼育体制が整備されています⁴。
政府公認のクロコダイル養殖場では、給餌から飼育環境、ストレス管理に至るまで厳しい基準が設けられており、自然死以外のワニは革にも肉にも使えないというルールさえあります。
これは、消費者が「倫理的に正しい財布」を手にできる仕組みを構築する努力の一環です。
動物福祉という観点でクロコダイル養殖を考察する際には、第92回|動物福祉法と産業倫理が参考となりますので、宜しければご一読下さい。
環境政策との両立|“育てる”革の新時代
養殖=環境破壊ではないという事実
一部の人々は「ワニ革=環境破壊」と感じるかもしれません。しかし、実際にはクロコダイル養殖は天然資源を守る仕組みとして機能しています。
野生クロコダイルの過剰捕獲を防ぐためには、持続可能な養殖による代替供給が不可欠であり、タイはCITESの理念に則り、「環境保全と経済成長の両立」を目指してきました⁵。
さらに、養殖池では排水処理施設や生物濾過システムが設置され、環境負荷を最小限に抑える技術が導入されています。
つまり、タイ製のクロコダイル財布は「自然を壊して作られた贅沢品」ではなく、「自然と調和した贅沢品」です。
クロコダイル財布と“選ぶ人”の責任
所有は表現でもあり、姿勢でもある
高級な財布を手にするという行為は、単なる消費行動ではありません。それは、自分の価値観や哲学を形にする行為とも言えます。
タイから直輸入されるクロコダイル財布は、価格以上の価値を提供します。それは、
- 高い職人技術
- 確かな品質
- 倫理的飼育と環境配慮
という3つの信頼に支えられているからです。
持つ者に“本物の責任”を問いかける──
そんな財布こそ、あなたの社会的地位と信念にふさわしい一品なのではないでしょうか。
まとめ|“正しい贅沢”という新しい選択肢を
タイという国は、クロコダイル財布を単なる輸出品としてではなく、“国の品格”を示す存在として扱っています。
高品質であることは当然、さらに「倫理的であるか」「環境に配慮されているか」「人に正しく伝えられているか」といった点においても、国際的な責任を果たそうとしています。
今後、ラグジュアリーの世界では、“正しい贅沢”がスタンダードになります。
あなたの選ぶその財布が、“価値のある消費”であり、“社会的選択”でもある──そう言えるようなクロコダイル財布を、ぜひ手にしてみてください。
クロコダイル産業と政策の歴史的背景について、もっと広く知りたい方へ──
本記事は「タイ文化におけるワニとのかかわり」にて取り上げている“クロコダイル財布を輸出する国の責任とは”に関連した内容です。
📚参考文献
¹ European Commission. (2021). Sustainable Fashion and Ethical Sourcing Guidelines.
² CITES Secretariat. (2023). Trade Database and Crocodylia Regulations.
³ Thai Department of Fisheries. (2022). Crocodile Farm Registration and Export Certification.
⁴ Animal Welfare Act, Thailand (2014).
⁵ UN Environment Programme. (2021). Wildlife Farming and Biodiversity Conservation in Southeast Asia.
