─“本物”を支える、タイの静かで力強いものづくりの現場から─
※本記事は「タイのクロコダイル産業史|革製品製作の始まりから現在までの歩み」で紹介されている“バンコク周辺の老舗工房とその歴史的背景”を詳しく掘り下げたものです。
誰が、どこで、どう作ったか──“一貫生産”が語る、本物の信頼。
■ 「高級なクロコダイル財布って、どこでどうやって作られているのか?」
一見しただけで分かる、圧倒的な存在感。
艶、鱗模様、手に取ったときの密度感──
クロコダイル財布は、まさに「本物を持つ男」にふさわしいアイテムです。
しかし、よく考えてみてください。
その財布は、いったいどこで作られているのでしょうか?
どこで革が育ち、誰の手で加工され、どんな工程を経て“あの姿”になるのか。
「高級=価格」という信仰では答えられない、本当の価値がそこにはあります。
そして、その答えは──タイにあります。
■ “分業”ではなく“連携”──革が生まれてからクロコダイル財布になるまで
革の品質は“どこで作るか”ではなく、“どう連携して作るか”に宿る──タイ独自の連携型モノづくりについては、第13回|産業としての起点でも詳しく掘り下げています。
日本やヨーロッパの多くの高級ブランドでは、製品が完成するまでに複数の業者が関わります。
- 革の仕入れ業者
- 加工・染色工場
- 製品縫製会社
- ロゴをつけるブランド本社
- 小売販売業者(百貨店など)
そのたびにコストが加算されますので、当然価格は高騰します。
しかしタイでは、一つの革が革のまま終わることがありません。
それは、「育てるところ」と「作るところ」が手を取り合っているからです。
■ チャチューンサオ県の養殖場──“素材を育てる”技術
タイのクロコダイル革製品の多くは、チャチューンサオ県で育ったシャムワニの革を使用しています。
この町には、CITES(ワシントン条約)に基づいて認可された養殖場が複数存在し、
ワニたちは厳格な飼育ガイドラインのもとで育てられています。
水質、餌、温度管理、ストレスの少ない環境づくり──
こうした手間の一つひとつが、**「自然に美しいスケール(鱗模様)」と「なめらかな革質」**を生むのです。
■ 同県内、または隣接地域の“鞣し工房”との連携
ここで育った原皮は、車で30分圏内の鞣し工房に運ばれます。
染色・艶出し・鞣し(なめし)という高度な処理が、
同じ地域の工房で職人の手によって丁寧に行われることで、革は財布やバッグの素材として整えられていきます。
この地域密着型の連携がもたらすのは、輸送による革の劣化リスクの極小化。
つまり、**「育ったその場所で、革として完成する」**という理想的な環境が整っているのです。
■ バンコク周辺の老舗工房で“命が宿る”──クロコダイル財布への最終工程
命ある革に“物語”を吹き込む場所──バンコクの老舗工房の役割と背景は、第6回|老舗工房の哲学をご覧ください。
仕上げられた革は、選別され、バンコク郊外の工房へと送られます。
私たちが提携しているのも、まさにこの地域にある工房です。
この工房では、
- 革の取り位置(どの鱗を中央にするか)
- ステッチの幅・縫い目の深さ
- コバ処理(革の断面の仕上げ)
- 内装とのバランス
すべての工程が、一人の職人の目と手によって確認されながら進められます。
この段階で、「本物」として誇れる財布かどうかが、最終判断されます。
■ 一貫生産体制とは、ただの工程短縮ではない
タイの革製品産業における“一貫生産体制”とは、単なる効率化ではありません。
むしろ、**“品質を保証するための唯一の道”**として存在しています。
- 養殖から加工までの距離が短いから、革の鮮度が保てる
- 製品化までが職人のネットワーク内で完結しているから、意思疎通が速い
- 一貫生産だからこそ、「この革は誰が育て、誰が縫ったか」が明確に語れる
この“語れる背景”こそが、タイ製クロコ財布が「信頼される本物」として選ばれる最大の理由です。
■ 実際に私たちが体感した“連携の美しさ”
タイに訪問したとき、ある老舗工房の職人がこんなことを言いました。
「ここの革は、○○ファームから来たもの。そこの飼育員は信頼できる。
うちの財布がきれいなのは、革がいいからです。でもそれは、彼らが丁寧に育てたから。」
このように、“自分の仕事の前段階”に敬意を払う文化が根づいているのです。
それが、最終製品にも自然とにじみ出てくる──。
これが、分業では得られない、タイの一貫生産体制の真髄です。
■ 高品質でありながら“適正価格”を実現できる理由
高品質=高価格ではない。タイが誇る“品質と価格の両立”の背景には、経済構造と文化的合理性があります。詳しくは、第4回|経済と産業の関係をご覧ください。
このような一貫体制の中で作られた製品は、
日本製よりも低価格で提供できるにもかかわらず、その品質はむしろそれ以上である場合が少なくありません。
理由は明快です。
- 中間業者がいないためマージンが発生しない
- 地域内で完結しているため輸送・在庫コストが圧縮されている
- ブランド広告費がゼロだから、製品価格に上乗せされない
- 工房が素材を理解しているため、ロスが少なく、最適な革の取り方ができる
つまり、「価格=品質」ではなく、**「構造=価格」**なのです。
最後に
クロコダイル財布を本気で選びたいと思ったとき、
「どこのブランドか」ではなく、**「どこで、どう作られているか」**を知ること。
それが、本物との出会いの第一歩です。
私たちは、タイの養殖場から革の完成、そして製品になるまで、
すべての工程に目を通したうえで、納得できる製品だけを直輸入しています。
それは、「安いから」でも「珍しいから」でもありません。
一貫しているから、信頼できる。
背景が語れるから、持っていて誇れる。
あなたもぜひ、価格やロゴでは語れない、“物語のある財布”を選んでみませんか?
タイのクロコダイル産業の全体像を、もっと広く知りたい方へ──
本記事は「タイのクロコダイル産業史|革製品製作の始まりから現在までの歩み」にて取り上げている“バンコク周辺の老舗工房とその歴史的背景”に関連した内容です。
