※本記事は「クロコダイル製品の品質と価格差」で紹介されている“革文化としての成熟度|タイと日本の消費者意識の違い”を選ぶという考え方”を詳しく掘り下げた記事です。
“見る目”が文化を育てる。クロコダイル財布に表れる日タイの価値観の違いとは?
クロコダイル財布に表れる「文化の成熟度」
クロコダイル財布をひとつ選ぶ――それは、単なる所有物の選定ではなく、「文化に根差した美意識」を映し出す選択でもあるのではないでしょうか。
同じ素材を使っていても、作り手の感覚や、買い手の受け止め方によって、その財布が持つ意味合いや“味わい”は大きく変わるものだと思います。
特に「革文化」という視点から見ると、タイと日本では、モノに対する価値観の根本に微妙な違いがあるように感じられます¹。
日本の消費者に根づく「緻密さ」と「保証」への信頼
“緻密な作り”が日本で高く評価される理由については、第55回|製造工程の比較も参考になります。
日本における革製品の文化は、「完成度の高さ」や「ミリ単位の整合性」に美を見出す傾向が強いように思います。
たとえばクロコダイル財布であれば、斑(ふ)模様の左右対称性、裁断の正確さ、縫製の均一性、コバの磨きの滑らかさ……これらすべてが“当然の品質”として求められます。
また、「購入後の保証」や「ブランドによる安心感」を重視する意識も根強く、製品の背後にある“体制”に対する信頼が購買の決め手になることも少なくありません²。
こうした傾向は、日本のモノづくり文化に根ざした「正確さ」や「秩序」に対する価値観から生まれているのかもしれません。
タイの消費者が持つ「素材との共生感覚」
一方、タイにおいて革文化は、もっと“素材に寄り添う”感覚が強いように見受けられます。特にクロコダイル革に対しては、革の斑模様や凹凸を“自然の個性”として尊重する傾向があり、それを活かす裁断や仕上げが好まれるようです。
また、タイでは職人との距離が近く、消費者が“作り手の顔”や“手の跡”を感じ取ることを価値と見なす文化があります。そこには、「完璧ではないけれど、気持ちが伝わる」ことへの肯定的な感覚があるのではないでしょうか³。
このような姿勢は、仏教文化に根づく「無常観」や「自然との調和」に由来している部分もあるのかも知れません。
「仕上げ」よりも「余白」に価値を見出す文化
“完璧さ”ではなく“抜け感”に魅力を感じるという考え方は、第62回|抜け感と緻密さの比較に通じる内容です。
日本製のクロコダイル財布は、どこまでも磨き込まれた美しさと均整の取れたフォルムに価値があるとされることが多いですが、タイ製のクロコダイル財布には“未完成の美”や“温かみのある仕上がり”といった、別の軸での魅力を感じます。
これは、文化的な成熟の差ではなく、“成熟の方向性の違い”と捉えるべきではないでしょうか。
タイでは、「余白があるからこそ想像が膨らむ」「不完全だからこそ味わいがある」といった感性が浸透しており、それがそのまま製品の仕立てにも現れているように感じます⁴。
消費者教育と「見る目」の違い
もうひとつの大きな違いは、消費者の「目利き」に関する文化です。
日本では、学校教育や生活の中で“正解を見抜く目”を養う傾向が強く、評価基準も明確で数値化されやすい側面があります。そのため、財布の仕上がりが「どう整っているか」「何が高級なのか」が明確に説明できる製品に人気が集まりやすい傾向があります。
それに対してタイでは、“感覚を重視する目”が育っている印象があります。素材に触れたときの心地よさ、手仕事の残るぬくもり、表情豊かな革の個性――そうした直感的な価値を見抜く力が、日常の中に自然と根づいているように感じられます⁵。
この違いは、クロコダイル財布の選び方や、その後の使い方にも影響を与えているのかもしれません。
クロコダイル財布に見る「国を越えた価値観の交差点」
“無名でも価値がある”という本質的な消費者の視点については、第70回|価値ある無名を選ぶ視点と併せて読むとより理解が深まります。
近年、日本の消費者の間にも「完璧さだけではない価値」を見出そうとする流れが生まれてきているように思います。
ブランドに依存せず、“自分の目で見て、心で感じて選ぶ”という購買スタイルは、まさにタイの革文化に通じるものではないでしょうか。
特に40代〜60代の男性層においては、「若い頃とは違う視点でモノを選びたい」「本質を知った上で、納得して買いたい」という想いを強く抱かれる方が増えているように感じます⁶。
クロコダイル財布というアイテムは、そうした価値観の交差点にある製品とも言えるかも知れません。
まとめ
タイと日本、それぞれの革文化には、歴史や宗教観、日常の価値観が色濃く反映されています。
日本では「正確さ」と「完成度」に、タイでは「素材の個性」と「人の手のぬくもり」に、それぞれ異なる形で価値が見出されています。そして、そのどちらもが“文化としての成熟”を体現していると言えるのではないかと思います。
クロコダイル財布を選ぶという行為は、単に所有物を選ぶこと以上に、「自分が何を大切にするか」「どんな文化に共鳴するか」を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
名や国籍に縛られることなく、誠実に作られた財布に触れたとき、そこには必ず“言葉を超えた価値”が宿っているのだと、私達は信じています。
クロコダイル製品の品質と価格差について、もっと広く知りたい方へ──
本記事は「クロコダイル製品の品質と価格差」にて取り上げている“革文化としての成熟度|タイと日本の消費者意識の違い”に関連した内容です。
📚参考文献
¹『革製品の文化比較』, 水谷明弘, 文化学研究会, 2018年
²『日本のモノづくりと消費者心理』, 森川佳紀, 東洋経済新報社, 2020年
³『東南アジアのクラフト文化』, 三宅俊彦, 明石書店, 2016年
⁴『不完全の美学』, 田口幹也, 新潮社, 2019年
⁵『感性消費の国際比較』, 柳井宏昌, 日本マーケティング学会, 2021年
⁶『成熟社会とモノ選びの心理学』, 佐々木健介, 中央経済社, 2022年