※本記事は「クロコダイル製品の品質と価格差」で紹介されている“日本ブランド採用クロコダイル財布革の原産地”を詳しく掘り下げた記事です。
日本ブランドが採用するクロコダイル財布の革原産地とは?
原産地の選定がどのようにブランド品質と結びついているかは、価格と品質の背景に通じます。詳しくは以下の記事をご覧ください。(第52回|価格差の実例比較)
―“日本製”の真実に迫る:知られざる革のルーツと価格の裏側―
「“日本製”クロコダイル財布の革、実は“日本産”ではなかった──原産地をめぐる本当の話」
はじめに|クロコダイル財布“日本製=国産素材”という誤解
クロコダイルの財布と聞くと、多くの方は「高級」「精巧」「日本製なら安心」といったイメージを抱くでしょう。
その一方で、「日本製」と表記された財布に使用されるクロコダイル革の原産地までは、意識する人が少ないのも現実です。
実は、日本で販売される高級財布に使われるクロコダイル革のほぼすべてが輸入品であり、日本産の革ではありません¹。
これは決して品質が低いという意味ではなく、ワニ革そのものが日本国内に存在しないという事実に基づくものなのです。
本記事では、その“原産地”に着目し、日本ブランドの財布に使われるクロコダイル革の真実を深掘りします。
日本ではクロコダイルは採れない
まず前提として、日本にはクロコダイルの生息環境が存在しません。
ワニ類は熱帯~亜熱帯地域に分布しており、自然界はもちろん、日本国内での養殖事例も現時点では確認されていません⁵。
そのため、日本のメーカーが扱うすべてのクロコダイル革は輸入品です。
これは牛や羊、馬の革も同様で、日本は“原皮産出国”ではなく、主に“加工国”としての技術力で評価されています。
主なクロコダイル革の輸入先国
革の信頼性を見極める視点として、流通経路や価格にまつわる構造の理解も重要です。(第56回|中間コスト構造)
日本に輸入されるクロコダイル原皮の主要原産国は以下のとおりです²:
| 国名 | 飼育種 | 特徴 |
|---|---|---|
| タイ | シャムワニ(C. siamensis) | 美しい鱗の整列、小物向き |
| パプアニューギニア | イリエワニ(C. porosus) | 柔らかく大型、鞣し品質に定評 |
| 南アフリカ/ジンバブエ | ナイルワニ(C. niloticus) | 迫力ある大型鱗、バッグ用途に最適 |
| オーストラリア | イリエワニ | 欧州ブランド御用達の原皮 |
特に近年は、タイとパプアニューギニアからの輸入量が圧倒的に多く、日本のクロコダイル革市場の供給を支えています³。
データが示す「タイ産シャムワニ」の存在感
CITES(ワシントン条約)の統計データベース⁴によると、日本は毎年1,000枚以上のシャムワニ原皮をタイから輸入しています。
これは、他の国と比べても群を抜いており、日本国内に流通する財布・小物の多くにタイ産ワニ革が使われている実態を示しています。
パプアニューギニアからのイリエワニ原皮輸入量も年800枚超に達しており、日本ブランドにとって欠かせない存在です。
シャムワニ vs ナイルワニ|財布に最適なのは?
クロコダイル革には複数の種がありますが、日本で高く評価されているのは以下の2種類です:
▶ シャムワニ(Crocodylus siamensis)|主にタイ産
- 小型で扱いやすく、柔らかい革質
- 美しく整った鱗(スケール)
- 腹部の「センター取り」は財布や名刺入れに最適
- タンナーから「バランスが良く、高品質」と評価⁶
▶ ナイルワニ(Crocodylus niloticus)|アフリカ・ジンバブエ産
- スケールが大きく、豪快な印象
- 硬質で耐久性があり、バッグやシューズ向き
- 高級ブランドのバッグで採用されることが多い
国内タンナーやレザーブランドは、用途に応じてこの2種を使い分けており、財布には圧倒的にシャムワニが選ばれています。
「日本製クロコダイル財布」とは、どこまでが“日本”か?
ここで重要なのは、「日本製」と表記された財布が、素材の段階からすべて日本で生産されたとは限らないという点です。
▶ 日本製=日本で加工・縫製した製品
- これはJIS規格に基づいた表示であり、素材の原産国を示すものではありません
- 革の原産地はタイ・アフリカ・パプアニューギニアなど
- 多くのブランドも、ホームページで「革の輸入元」を明記しつつ、“日本製”を強調して販売しています⁷
このような誤解は、特に「安心・信頼」を求める日本の消費者にとって混乱を招く原因となります。
実際の検品や仕上がり基準の違いが消費者判断にどう影響するかを分析した記事はこちら。(第57回|検品基準の違い)
クロコダイル財布の価格に含まれる“目に見えないコスト”
ここで、日本製クロコダイル財布が高価格となる背景を整理してみましょう。
✅ 日本ブランド(参考:価格38万円のラウンドジップ財布)
| 項目 | 推定費用 |
|---|---|
| 原皮仕入れ(シャムワニ) | 約5万円 |
| 鞣し・染色加工(日本国内) | 約3万円 |
| 縫製・仕上げ(国内熟練工) | 約7万円 |
| ブランド価値・販促費 | 約10万円 |
| 小売・マージン | 約13万円 |
合計:38万円(税込)
✅ タイ製(MITAKANO CRAFT直輸入:価格9万円)
| 項目 | 推定費用 |
|---|---|
| 原皮仕入れ(同等品質) | 約5万円 |
| 鞣し・染色加工(タイ) | 約3万円 |
| 手縫い仕上げ(現地職人) | 約2万円 |
| ブランド料・マージン | ほぼゼロ(直販) |
合計:9万円(税込)
→ 同じクロコダイル革を使っていても、ブランド料や中間コストの有無で価格差は4倍近くに。
タイの工房は「安かろう悪かろう」ではない
日本では「安い=粗悪」と思われがちですが、実際には以下のような事実があります:
- タイの革工房は、ルイ・ヴィトンやサンローランのOEM生産実績もある
- タイ政府による皮革技術訓練制度が整備されている
- タンナーの一部は国際基準で品質認証を取得済み⁶
つまり、「価格が安い=質が劣る」とは限らないのです。
特に当店MITAKANO CRAFTが提携する工房は、職人歴20年以上の技術者が一点一点手縫いで仕上げた製品を提供しています。
賢い消費者が選ぶべき「クロコダイル財布」とは?
これからの時代に財布を選ぶ基準は、単なるブランドネームではありません。
✔ 何の素材を使っているか?
✔ どの国の誰が作ったのか?
✔ 価格に見合う価値があるか?
✔ 信頼できるルートで届けられているか?
こうした「透明性」にこそ、本当の“信頼”が宿るのです。
まとめ|クロコダイル財布の価値は“革の出所”で決まる
クロコダイル財布において、「日本製=すべてが日本産」ではないという事実は、消費者にとって大きな気づきとなるはずです。
日本の高級ブランドも、タイやパプアニューギニアから輸入した革を使い、国内で縫製することで「日本製」として販売しています。
つまり、素材レベルで見れば、タイの優良工房で製造されたクロコダイル財布と本質的な差はないとも言えるのです。
本当に価値のある一品とは、
「どこで作られたか」ではなく、「誰が、どんな想いで作ったか」に宿る。
MITAKANO CRAFTでは、素材・技術・価格すべてにおいて正直な「クロコダイル財布」を、これからも皆様に届けていきます。
クロコダイル製品の品質と価格差について、もっと広く知りたい方へ──
本記事は「クロコダイル製品の品質と価格差」にて取り上げている“日本ブランド採用クロコダイル財布革の原産地”に関連した内容です。
📚 参考文献
- 環境省「種の保存法に基づく取引許可について」https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozon.html
- 経済産業省「ワシントン条約に基づく種の国際取引管理の現状」2022年報告
- 日本皮革産業連合会「クロコダイル革の需給と流通に関する調査報告書」(2021年)
- UNEP-WCMC CITES Trade Database https://trade.cites.org
- 日本ワニ学会資料(大学研究会による報告)
- タイ工業省「皮革産業と農場技術の発展」(2020年報告書)
- 国内ブランド公式サイト(実名は公開不可)