はじめに|カービングは「段取り」が命
レザーカービングの美しさは、単に図案や技術だけで決まるものではありません。実際には「工程=段取り」をきちんと理解し、正しい順序で丁寧に作業を進めることが、完成度を大きく左右します。
この記事では、初心者の方が最初に習得すべき「基本工程」である
- トレース
- カット
- スタンピング(刻印)
の3ステップを中心に、作業の順序とポイントを解説します。

1. 図案を革に写す「トレース」工程
● トレースとは?
トレースとは、紙に描かれた図案を革へ転写する作業のことです。単なる下書きではなく、カービングのすべての工程の「土台」となる大切なステップです。
● 使用する道具
- トレースフィルム(セロハンのような素材)
- トレーサーまたはボールペン型の道具
- モデラやスタイラス
- テープ(固定用)
● トレースの手順
- 図案をトレースフィルムに写す: 印刷した図案をフィルムに重ね、ペンでなぞる。
- フィルムを革に固定する: 水で湿らせた革(ケーシング済)にフィルムをマスキングテープで固定。
- トレーサーでなぞる: 圧を均一にかけながら図案を革に写し込む。
● 注意点とコツ
- ケーシング(湿らせた革の状態)を適切に保つこと。
- 圧力は強すぎず弱すぎず均等に。
注釈:革が乾きすぎているとトレースが薄くなり、湿りすぎていると線がにじむため、ケーシングの管理が重要です[1]。
2. カービングナイフで「カット」する工程
● カットの目的
トレースされた図案のラインに沿って、カービングナイフで革を切り込み、立体感のあるラインを作る工程です。
● 使用する道具
- カービングナイフ(スーベルナイフ)
- 回転刃のメンテナンス済のもの
- 回転砥石・革用研ぎ器
● カットの手順
- ナイフの刃を確認: 鋭利に研いでおく。
- 姿勢と持ち方を意識: 肘を安定させ、手首を中心に回転させる。
- カット開始: トレースラインに沿って刃を1~1.5mm程度入れる。
● よくある失敗例
- 深く切りすぎて裏まで貫通する
- 刃の角度が立ちすぎて革がめくれる
- 手の動きがブレて線が歪む
● ワンポイント
初心者は最初、カットの練習用として「床革」や「半端革」を使い、曲線やループラインの練習をすると良いでしょう。
注釈:カットの深さは革の厚みにもよりますが、通常は0.8mm〜1.5mm程度が目安とされています[2]。
3. 「刻印」で陰影と立体感を出す
● スタンピングとは?
カットされたラインに立体感や装飾性を加えるために、刻印ツールで革を叩く工程です。
● 使用する道具
- スタンピングツール(ベベラー、シーダー、バスケットなど)
- ハンマーまたはモール
- マットまたは打刻ベース
● スタンピングの手順
- 適切なツールを選ぶ: デザインや目的に応じて選定。
- 刻印位置を確認: カットラインの縁に沿って配置。
- モールで軽く叩く: 一定の力と角度でリズムよく叩く。
● コツと注意点
- 力の強弱で陰影が変わるため、練習が重要。
- ケーシングが不十分だと打刻が浅くなったりムラになる。
- 刻印は「一打ごとに確実に」打つのがポイント。
注釈:プロは一打で決めることを重視し、「二度打ち」は避ける傾向にあります。リズムと集中力が求められる作業です[3]。
まとめ|工程を理解すればカービングが楽しくなる
レザーカービングにおいて、「トレース → カット → 刻印」という基本工程を理解することは、作品の完成度だけでなく、作業そのものの楽しさにも直結します。
- 工程を飛ばさない
- 適切な道具を使う
- 革の状態を常に観察する
という3つの意識があるだけで、初心者でも一段上の仕上がりを実現できます。
