はじめに
立体感は“偶然の影”ではなく、決めた光源に合わせた線と影の配置で作れます。
ここでは、光を左上→右下(斜光45°)に固定し、外深・内浅/短浅シャドウ/細い黒の残しを中心に、花・葉・渦・レタリング・バスケット境界までを説明致します。
手数を増やすほど濁るので、少ない手数で効かせる順番を手に入れてください。
光を決める:斜光45°と“どこを明るく残すか”
光を決めないと、影は迷子になります。
私はラフの時点で左上→右下に矢印を一本引き、明い稜線のルートを紙の段階で決めます。
主役の輪郭と緩衝帯(1〜3mm)は“白く呼吸する地帯”。ここを守るだけで、写真のサムネ(長辺600px)でも浮いて見えます。
- 要点(2割の箇条書き)
- 光矢印を必ず描き、撮影も同じ方向に合わせる
- 外周2〜3mmは明るく保つ(出口側は+0.3〜0.7mm)
- 主役周囲は緩衝1〜3mmで白を残す
影の三原則:短・浅・方向合わせ
影は深く長くしがちですが、短く・浅く・線方向にが正解です。
長影はにごりの原因。
短い影を最大3点まで置き、導線(入口→停留→出口)に沿って方向を揃えます。
アンティークは線方向拭きで“細い黒”だけ残すと、線が立ちます。
- 影の置き方ミニルール
- 1箇所に短浅×3点以内
- 導線に平行/交差角は15°以内
- 拭き上げは線方向。面のベタ黒は禁止
ライン設計:主線・副線・シャドウライン
立体感の決め手は、線の“役割分担”。
主線=輪郭の主役/副線=質感の補助/シャドウライン=段差の合図。
主線は切れ味重視で細く深く、副線は浅く短くで面の流れを示します。
シャドウラインはベベル後に、稜線の“影側”へ0.3〜0.5mmずらして薄く刻むと、段が一段落ちます。
- 失敗回避
- 主線が太い→角度を立てる/圧は短く
- シャドウラインが濃い→0.3mm以内に戻す
- 副線が多すぎ→10%削減で面を回復
工程の順番:段差→境界→影→仕上げ
順番を崩すと濁ります。
ベベル→ハーフムーン→ビーディング→薄BG→(必要なら)シャドウライン→アンティーク。アンティークは最後に線方向拭きで“細い黒”を残すだけ。ここで面を黒く埋めると、稜線が負けます。
- メモ
- ハーフムーンは短い弧×弱打の連続で面を落とす
- ビーディングは境界の曖昧化が目的(3列設計)
- BGは薄く・方向性あり、ベタ塗りはしない
パーツ別:どこに、どれだけ、どう置くか
花弁
外側を外深、内側(花芯側)を内浅。
花弁の基部に短浅×1〜2点。花芯周りは緩衝1.5〜2mmを確保して光を残す。
渦(スクロール中心)
渦心の外側に白い島(1〜2mm)を一つ。
渦の背中側へシャドウライン0.3mmを薄く滑らせ、面の傾斜を作る。
葉(折り返し)
折り返しの“山”は明に、谷側に短浅。葉脈は副線で浅く短く。
やり過ぎると紙のように薄く見えるので本数を絞る。
バスケット境界
曖昧化3列(ハーフムーン薄→ビーディング→薄BG)。
直線で止めると“崖”。影は境界側に短浅1点だけで十分。
レタリング
読み>装飾。3ガイド(ベース・xハイト・傾き)を守り、影は短浅1〜2点。
カウンター(文字の内側)は内浅で死守。交差は白抜けを作る。
明暗の配分:60/30/10の立体設計
立体感は“どこを暗くするか”より、どこを明るく残すかで決まります。
画面の60%=中明/30%=中暗/10%=明(稜線・白島)。この10%が曖昧だと、全体がにごります。
主役の稜線と緩衝帯、渦心の白島、出口側外周を“明”として確保。
- 配分のコツ
- “明10%”を先にマークしてから作業
- “暗30%”は境界グラデで面状に
- “中60%”で画面の地を作る(アンティークは薄く)
ケースレシピ(3分で読める実装)
A:一輪フローラルの立体感
ベベル→ハーフムーン(花弁の谷だけ)→ビーディング→薄BG→シャドウライン0.3mm(花弁の重なり側)→線方向拭き。花芯周囲は緩衝2mmで明を確保。
効きどころ:花芯の明/花弁基部の短浅×2点。
B:スクロールの起伏
渦心に白島。背中側へシャドウライン0.3mm、外周側はハーフムーン薄で落とす。出口側外周+0.5mmで光の逃げ道。
効きどころ:白島と0.3mmの影の対比。
C:名入れタグの立体文字
3ガイド→主線細深→交差白抜け→短浅影1点(右下)→線方向拭き。ピリオドに極小の一点色。
効きどころ:カウンターの内浅と影の短さ。
7分ドリル(端革で“効き”だけ確認)
端革を3枚用意。
1枚目:ベベル→ハーフムーンのみで面の落ち方を見る。
2枚目:シャドウライン0.3mmの有り無しを比較。
3枚目:アンティークの線方向拭きで“細い黒”だけを残す。
最後に半艶トップ→斜光45°撮影→600pxサムネで判定。主役が先に見えれば合格。
- 覚え書き
- 影は短浅3点以内
- **明10%**を削らない
- ベタ黒・長影・面の厚塗りはしない
よくある失敗 → その場で直す
影が長い/濃い:綿棒で点拭き→シャドウラインを0.3mmに戻す。
主役が沈む:緩衝+0.5mm→稜線ドライブラシ極薄で起こす。
境界が崖:曖昧化3列を追加。
文字がつぶれる:交差に白抜け→影を短浅1点まで減らす。
写真で弱い:半艶トップ→斜光45°→背景無彩色で再撮。
まとめ
立体感は、光の固定/短浅の影/線の役割分担/明10%の死守で作れます。
- 影は短く浅く、最大3点。
- シャドウラインは0.3〜0.5mmで“段の合図”。
- アンティークは線方向拭きで“細い黒”。
- 緩衝帯と白島で“明”を確保。
この順番を守るだけで、手数は少なく、見え方は大きく変わります。
注釈
[注1] 短浅の定義:影の長さは要素幅の1/3以下、濃度は周囲の中明より1段暗い程度を上限に。[注2] シャドウラインの幅:0.3〜0.5mmを推奨。0.6mm以上は“線が二本”に見えやすい。
[注3] 曖昧化3列:ハーフムーン(弱)→ビーディング→薄BGで段差を階調化(第63・69回)。
[注4] 読みの確保:レタリングは3ガイドとカウンター内浅が最優先(第87回)。
[注5] 撮影条件:半艶トップ×斜光45°で稜線の白を拾い、600pxサムネで主役→出口の順に読めるか判定(第81・83・92回)。