クロコダイル製品、パイソン製品は現地の工場に直接製作依頼し、熟練の職人が丁寧に手作業で作成したハンドメイド。大量生産では決して真似できない、細部にわたる職人のこだわり。本物を求めるあなたにも手に取っていただきたいと願っています。

【第97回】立体感を出すカービングテクニック|シャドウとライン

はじめに

立体感は“偶然の影”ではなく、決めた光源に合わせた線と影の配置で作れます。

ここでは、光を左上→右下(斜光45°)に固定し、外深・内浅/短浅シャドウ/細い黒の残しを中心に、花・葉・渦・レタリング・バスケット境界までを説明致します。

手数を増やすほど濁るので、少ない手数で効かせる順番を手に入れてください。


光を決める:斜光45°と“どこを明るく残すか”

光を決めないと、影は迷子になります。

私はラフの時点で左上→右下に矢印を一本引き、明い稜線のルートを紙の段階で決めます。

主役の輪郭と緩衝帯(1〜3mm)は“白く呼吸する地帯”。ここを守るだけで、写真のサムネ(長辺600px)でも浮いて見えます。

  • 要点(2割の箇条書き)
    • 光矢印を必ず描き、撮影も同じ方向に合わせる
    • 外周2〜3mmは明るく保つ(出口側は+0.3〜0.7mm)
    • 主役周囲は緩衝1〜3mmで白を残す

影の三原則:短・浅・方向合わせ

影は深く長くしがちですが、短く・浅く・線方向にが正解です。

長影はにごりの原因。

短い影を最大3点まで置き、導線(入口→停留→出口)に沿って方向を揃えます。

アンティークは線方向拭きで“細い黒”だけ残すと、線が立ちます。

  • 影の置き方ミニルール
    • 1箇所に短浅×3点以内
    • 導線に平行/交差角は15°以内
    • 拭き上げは線方向。面のベタ黒は禁止

ライン設計:主線・副線・シャドウライン

立体感の決め手は、線の“役割分担”。

主線=輪郭の主役/副線=質感の補助/シャドウライン=段差の合図

主線は切れ味重視で細く深く、副線は浅く短くで面の流れを示します。

シャドウラインはベベル後に、稜線の“影側”へ0.3〜0.5mmずらして薄く刻むと、段が一段落ちます。

  • 失敗回避
    • 主線が太い→角度を立てる/圧は短く
    • シャドウラインが濃い→0.3mm以内に戻す
    • 副線が多すぎ→10%削減で面を回復

工程の順番:段差→境界→影→仕上げ

順番を崩すと濁ります。

ベベル→ハーフムーン→ビーディング→薄BG→(必要なら)シャドウライン→アンティーク。アンティークは最後に線方向拭きで“細い黒”を残すだけ。ここで面を黒く埋めると、稜線が負けます。

  • メモ
    • ハーフムーンは短い弧×弱打の連続で面を落とす
    • ビーディングは境界の曖昧化が目的(3列設計)
    • BGは薄く・方向性あり、ベタ塗りはしない

パーツ別:どこに、どれだけ、どう置くか

花弁

外側を外深、内側(花芯側)を内浅

花弁の基部に短浅×1〜2点。花芯周りは緩衝1.5〜2mmを確保して光を残す。

渦(スクロール中心)

渦心の外側に白い島(1〜2mm)を一つ。

渦の背中側へシャドウライン0.3mmを薄く滑らせ、面の傾斜を作る。

葉(折り返し)

折り返しの“山”はに、谷側に短浅。葉脈は副線で浅く短く

やり過ぎると紙のように薄く見えるので本数を絞る。

バスケット境界

曖昧化3列(ハーフムーン薄→ビーディング→薄BG)。

直線で止めると“崖”。影は境界側に短浅1点だけで十分。

レタリング

読み>装飾。3ガイド(ベース・xハイト・傾き)を守り、影は短浅1〜2点

カウンター(文字の内側)は内浅で死守。交差は白抜けを作る。


明暗の配分:60/30/10の立体設計

立体感は“どこを暗くするか”より、どこを明るく残すかで決まります。

画面の60%=中明/30%=中暗/10%=明(稜線・白島)。この10%が曖昧だと、全体がにごります。

主役の稜線と緩衝帯、渦心の白島、出口側外周を“明”として確保。

  • 配分のコツ
    • “明10%”を先にマークしてから作業
    • “暗30%”は境界グラデで面状に
    • “中60%”で画面の地を作る(アンティークは薄く)

ケースレシピ(3分で読める実装)

A:一輪フローラルの立体感
ベベル→ハーフムーン(花弁の谷だけ)→ビーディング→薄BG→シャドウライン0.3mm(花弁の重なり側)→線方向拭き。花芯周囲は緩衝2mmで明を確保。
効きどころ:花芯の明/花弁基部の短浅×2点。

B:スクロールの起伏
渦心に白島。背中側へシャドウライン0.3mm、外周側はハーフムーン薄で落とす。出口側外周+0.5mmで光の逃げ道。
効きどころ:白島と0.3mmの影の対比。

C:名入れタグの立体文字
3ガイド→主線細深→交差白抜け→短浅影1点(右下)→線方向拭き。ピリオドに極小の一点色。
効きどころ:カウンターの内浅と影の短さ。


7分ドリル(端革で“効き”だけ確認)

端革を3枚用意。
1枚目:ベベル→ハーフムーンのみで面の落ち方を見る。
2枚目:シャドウライン0.3mmの有り無しを比較。
3枚目:アンティークの線方向拭きで“細い黒”だけを残す。
最後に半艶トップ斜光45°撮影600pxサムネで判定。主役が先に見えれば合格。

  • 覚え書き
    • 影は短浅3点以内
    • **明10%**を削らない
    • ベタ黒・長影・面の厚塗りはしない

よくある失敗 → その場で直す

影が長い/濃い:綿棒で点拭き→シャドウラインを0.3mmに戻す。
主役が沈む:緩衝+0.5mm→稜線ドライブラシ極薄で起こす。
境界が崖:曖昧化3列を追加。
文字がつぶれる:交差に白抜け→影を短浅1点まで減らす。
写真で弱い:半艶トップ→斜光45°→背景無彩色で再撮。


まとめ

立体感は、光の固定/短浅の影/線の役割分担/明10%の死守で作れます。

  • 影は短く浅く、最大3点
  • シャドウラインは0.3〜0.5mmで“段の合図”。
  • アンティークは線方向拭きで“細い黒”。
  • 緩衝帯と白島で“明”を確保。
    この順番を守るだけで、手数は少なく、見え方は大きく変わります。

注釈

[注1] 短浅の定義:影の長さは要素幅の1/3以下、濃度は周囲の中明より1段暗い程度を上限に。
[注2] シャドウラインの幅:0.3〜0.5mmを推奨。0.6mm以上は“線が二本”に見えやすい。
[注3] 曖昧化3列:ハーフムーン(弱)→ビーディング→薄BGで段差を階調化(第63・69回)。
[注4] 読みの確保:レタリングは3ガイドとカウンター内浅が最優先(第87回)。
[注5] 撮影条件:半艶トップ×斜光45°で稜線の白を拾い、600pxサムネで主役→出口の順に読めるか判定(第81・83・92回)。

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